昼間も少し肌寒感じてきた今日この頃。台所の水仕事も少しずつ辛くなってきた。

給仕の仕事をやらせてもらっている以上避けては通れない道で、こればかりは我慢するしかない。

ただ、嫌な仕事ばかりではない。秋といったらこれ、と楽しみなことがあった。




「秋って言ったら食欲の秋でしょ」

縁台で庭に咲く紅葉した葉を一つ取り言う。

は秋に限らず一年中食欲で満たされてると思うけどな」

「そうそう、その葉っぱだって食おうとしてるだろ」

永倉と原田は笑いながら箒を握るに話しかける。

は、頬を膨らませ振り向き箒の棒の方を二人に突き付けた。

「そんな失礼なこと言う人たちには焼き芋あげません!」

再び背を向け取った葉を胸にしまい箒で地面の落ち葉を掃き始めた。

楽しみとはこれ、焼き芋である。食事についてはすべて任されているので好きな時好きなだけ

このように焼き芋ができるわけだ。と言っても、毎日はさすがに飽きるので一週間に一度こうして

庭先で焼き芋をやるのだ。

後ろで『えー!?』だの『そりゃないぜ』だの喚きだした二人の言葉を聞いてくすくす笑う。

「でも、まぁ、夕食の買出しに行ってきて下さるのならあげても良いけど?」

そう言うと、行ってきます!と、ものすごい勢いで走り行く二人の姿が横目に入った。

「何買ってくるのか分かってるの?秋刀魚を10尾と人参5本、大根2本、胡瓜7本ね!」

了解ー!と遠くから返事がきてはぁ、とため息を吐いた。毎度ながらあの二人には疲れる。

あの二人の仕事の時間を変えるべきだと抗議したいくらいだ。




「毎度ご苦労様です」

振り向けば縁台に苦笑いしながら立っている人物がいた。

「山南さん!」

そこにはここしばらく姿を見なかった山南さんがいて、逃すまいと駆け寄り裾を握る。

戸惑った表情をされたが、気にせず笑顔を向ける。

「このまま素通りなんてことしませんよね」

「・・・まぁ、それは許されない感じですね」

縁台のほうへ座るよう促し、は庭に向かい集めた落ち葉を縁台近くまで持っていった。

芋を落ち葉の奥深くに入れ火をつける。

無事火がついたのを確認してから山南さんの方を向く。ちょうど向かい合う位置にいた。

「今日はみんなと一緒に夕飯食べてくださるんですか?」

「・・・すまない、どうしても今日中に終わらせなくてはいけない仕事があるんだ」

「私と会話してる場合じゃないってことですよね」

「それはない。ちょうど休憩しようとしてたところだ。それに、たまにはこうして縁台に座り日を浴びないと

腐ってしまいそうだしね」

そう言って微笑みかけてくれる山南さんはとてもやさしい。




いつでも笑っていて、明るくて、そしてやさしくて・・・。


しかし、最近顔を合わす機会が減っていた。部屋に篭って仕事仕事といつも忙しそうで。


ここ数日、食事を山南さんの部屋まで運ぶのが毎日で、部屋の前に置くだけだから顔を合わせることはなかった。


だから、今日、久しぶりに山南さんに会って笑顔を見せてくれてとても嬉しかった。


やはり一日一回は見ないと調子が狂う感じがする。だって、新撰組にはいなくてはいけない存在だから。





は手元に目線を動かし落ち葉を足した。

「今日は魚の炊き込みご飯にしてみようと思うんです。御握りにして部屋まで持っていきますね」

「いつもすいません」

「すまないって思うんでしたら皆と食事とってくださいよ」

「・・・そう、ですね。今度からはそうします」

山南さんをチラッと見ると、少し辛そうに笑っていた。

そんな風に笑ってほしくない。笑うときは楽しい時だって思うから。心から楽しいと思った時に笑うものだ。

「山南さんの悪いところですね」

突然何を言い出すのかと山南さんは首をかしげる。

「なんでも笑って請け負い過ぎなんですよ。無理なことは無理だって言わなくちゃだめです」




本当は一緒に食事をとることは難しい。仕事だって無理難題を押し付けられても笑って請け負ってる。


誰かがやらなくちゃいけないことは分かってる。山南さんが適任だからこそみんな頼んでることも分かる。


だからって、なんでも受けてたら山南さんが壊れてしまう。


心から笑ってもらいたかった。


そして、もっとそばにいてほしい。




「私、いつだって副長の元に殴りこみに行く覚悟はありますから。今度また辛い仕事押し付けられたときには

全員、食事抜きにすることも考えちゃいます!」

「それは、土方君も堪ったものじゃないね」

「すべては山南さんの返事しだいですよ?」




木の棒を取り出し芋を動かす。さらに落ち葉を足して立ち上がり山南さんの方へ近寄る。

「で、どうなんですか?私、殴りこみに行くことになりそうですか?」

「・・・・・手加減はしてあげてください。なにか本当に土方君負けちゃいそうな感じなんで」


ため息を吐いた。つまりは、仕事はこれからも請け負い続けるらしい。

どんなこと言ったって仕事を優先させるのは総長の責任からか、もしくはほっておけない山南さんの性格からか、

・・・新撰組のためか。



新撰組と言う組織がなかったら山南さんと会うことはなかっただろう。

山南さんがこうして頑張ってくれているからこそ、今だって会うことができる。

頭では分かっていても割り切ることができない。



「意味のない殴りこみはしません。・・・私は、山南さんともっとこしてゆとりのある時間がほしかっただけだから。

一緒に笑っていられる時間が・・・」

懐から葉を取り出し山南さんに渡す。

「季節というものは、手に触れて目で楽しむもの。山南さんも一日一回は日に当たって紅葉を楽しめるように

してください。不健康になってしまいます!」

それに、仕事もはかどらなくなるかもしれませんよ?と言いもとの場所へ戻ろうとした。



その時、急に腕をつかまれ驚く。振り向くと腕を掴んでないほうの手が伸びてきての頬に触れた。


おもわず身体が固まる。


一気に顔が熱くなったのが分かる。きっと顔は真っ赤になっていることだろう。




「確かに、手に触れて目で楽しむものですね。ですが、一日一回こんなことしてたら、逆に不健康になりそうですね」



「・・・・・・・・・・・ぇえっ!」



何か欲情されていらっしゃる?

なんて答えたらいいか分からずしばらく固まっていると山南さんは微笑む。



「でも、まぁ、今日はこれで我慢しておきます」

そう言いの手を持ち上げ手の甲に唇を落とした。




すると、門から『あ゛―!!』と大声が上がるのを聞いた。

それは、買い物に行ったはいいが金を持っていなかったことに気づいて戻ってきたあの二人の声である。

二人のありえない光景を目の当たりにしてしまい、このあとしばらくつっこまれることとなる。

二人が無事?開放されたのは少しこげた焼き芋をこの二人にほとんど食べられてしまった後であったと言う。





                         完


あとがき

誰の夢を書こうかということで山南さん。全部さんづけにしちゃいましたがまぁいいってことで(←ヲイっ
復帰作として晋作でもいっちゃおうか自分!と思っていましたが、長州語に挑むのは相当の元気と時間がないと
できんってことで標準語さんで書いてない方。山南さん抜擢!そして裏設定として今回の主人公さんは
『朝』で書いた主人公と同じ人物ってのがあるんですが・・・まぁ、いいですかそんなことは?(ぇ?
大河の山南さん風味。山南スマイルは健在ですか!?山南走りも健在ですか!?(壊
そして、自分はまだ「友の死」の話見てません!(爆)手遅れですか?自分もはや手遅れですか?
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