日帰りをするはずだった。距離はあっても帰れない距離ではない。

せいぜい歩いて二時間というとこか。

しかしこのような格好で帰れるはずはなく、一泊することとなった。



そもそもことの原因は先刻、海を見に行った時、誤って海に落ちたことにある。

べっとりとした塩水が気持ち悪いのもあったが、それより重大なことに気づいた。

衣服が透けていたのだ。夏場だったため薄めの着物を着ていたのがよくなかった。

近くの宿舎に泊まり、べとついた体を洗い新しい着物を着る。そしてやっと落ち着いた。




「それにしたちおおごとやったのぉ。海に浸かっちゅうときは面白かったがやかけど」

先程のことを思い出したらしく龍馬は再び笑い出した。

一緒に笑いたいところだが、それどころではなかった。

確かに今は落ち着いてはいる。状況的には落ち着いて見えるかもしれないが、心は爆発寸前である。


今日ここに泊まるということは一晩を共にするということではないか。

しかも部屋が別ならまだしも、金がもったいないし別にする必要ないだろと言って一部屋しか取らなかったのだ。

必要ないって一応男と女って気づいているのだろうかと聞こうかとも思った。

だが、龍馬なら本当に気づいてない可能性が高い。いや、気づいてないだろう、と

勝手に決め付けていた。



、どうかしたがか?」

「いいいいいいいいえ?どうもしてませんが」

突然話しかけられ声も上擦ってしまった。

「本当かぇ?体調が悪いのならはよぅ寝たほうがいいぜよ?」

こんなに興奮してたら眠りたくても眠れません!と言いたいのを我慢しつつ『私は大丈夫ですから』と

龍馬こそ寝てはどうかと勧めた。

「こんな夜じゃき、寝るのはもったいないぜよ」

言っていることが言っていることだけに、変に捉えてしまう。

このままでは緊張しすぎてどうにかなってしまうと、少し涙目で訴えれば更なる勘違いをされる。


「やはり体調が悪いがやないがか?熱は・・・」


と急に龍馬の顔が近づいてきてでことでこが当たる。

「ん〜、ちと熱いかの〜。宿主に言って薬もろーてくるきに、まっとおせ」

龍馬は立ち上がり部屋から出ていった。



顔がとても熱い。あれほど近くで顔を拝見したのは初めてだし、一体どこを見たらいいのか分からなかった。

まさかこんなことが一晩も続くのかと思うと、心臓がいくらあっても足りない。







ふとは妙案を思いついた。




寝たふりをしよう。




寝たと知れば龍馬も大人しく寝てくれるだろうし、この胸の高鳴りも治まるだろうと思ったのだ。



早速寝たふりをし龍馬を待つ。

しばらくして龍馬は部屋に戻ってきてに近づいてきた。


「なんじゃ、寝てしまったのか。この薬どうしようかぇ」

思ったとおり龍馬はおとなしくなり、自分の胸の高鳴りも相手の顔を見てないためか治まってきた。



このまま寝てしまおうと決めた。










その時である。













「ごめん」











その言葉と同時に、龍馬が動く気配があった。

顎に手を当てられ、唇にゆっくりと何かが触れたかと思うと異物が混入された。

驚いて吐き出そうとしたが、手で押さえられ口も塞がれていてはどうしようもない。


ゴクッと飲み込み、目を開ければそこには龍馬がいっぱい広がっていた。




「龍・・・馬さ、ん」



「悪い、。わし・・・・・我慢できん」


急に唇がふってきて再び口が塞がれる。今度は薬ではなく舌が混入してきては手で龍馬を押し

顔を背ける。

すると、龍馬は首に顔をうめ吸い付く。何回も違う場所に唇を落とし、手はの帯を解き始めた。

「やめ、やめてくださいっ!」

抵抗しようともがいても力で竜馬に敵うはずもなく、成す術を失う。

胸に唇が落ちてきた時、ビクッと震え涙が頬を伝った。



「おんし・・・・・・・」



龍馬はしばらくをみつめ、ゆっくりと離れた。

「・・・怖い思いさせてしもうたな。安心しとおせ。もう近寄りやーせんから」

そういうと龍馬はこの場から去ろうとした。



怖かった。



こんな龍馬は知らないし、いつもの、あのいつも絶やさなかった笑顔がこのときの龍馬にはなかった。



抵抗してもやめようとしない。恐怖を感じた。



でも、怖かったはずなのに、去ろうとする龍馬の段袋を掴んでいた。


「いかな、いかないで・・・ください」

?」

「怖いです。今の龍馬さんは怖いです。・・・でも、一緒にいたいです。龍馬さんが好きだから」

・・・」

震えながら袴を掴んでいたの手を龍馬はやさしく包み込んだ。

「ありがとう。・・・おんしと会える機会も少ない。焦り過ぎたのかもしれん。それに・・・」

空いているほうの手をの頬にあて笑顔を向ける。

「わしもが好きやき。やはり焦ってたのかもしれん」

いつもの顔に戻っていた。優しい表情をしていた。


龍馬が離れたので、起き上がろうと手をついたところで慌てて止められる。

「ちっくと待て!起き上がらきおせ」

「何故ですか?」

「いや、・・・その、見えてしまうとこっちがたいそいもがやき」

「見える?」

何が?と思い自分の姿を見る。

一瞬にして顔が赤くなる。

合点がいった。先程の出来事で着衣が乱れていたのだ。

急いで胸元をしまい、脚もとを整えると呼吸を正しながら起き上がった。

「これで大丈夫ですよね?」

ぎこちない笑顔を向け言うと龍馬は笑い出した。

「ああ、まっことおんしかわいい人やき」

髪の毛をクシャクシャと撫でられた。

「子ども扱いしないでくださいよぉ」

「じゃー、さっきの続きしたちいいかえ?」

「えっ、あ・・・・・あの・・・」

俯き口ごもる姿を見て龍馬はさらに笑い出した。

「まっこと見ててあきない人じゃ」

やはりこのままだと一晩もたないと思った。こんな調子でからかわれ続け、気づいたら二人とも

疲れて眠っていた。



                             完





あとがき
今回は変換機で土佐弁をやらせてもらいました。正直もとの言語わかりません(爆)
さて『海』の続きで作らせていただきましたが何この差!?前回がアレなだけに今度こそ夢っぽくしよう
としたら路線間違えたよ自分!はやまりか!?むしろはやまりか!?(意味不明
前回の銀魂坂本的感じを今回は受けないように作りましたがどうですかね。ちなみに大河、幕末恋歌、
幕末伝、ピスメ、銀魂とありますが自分は幕末伝の坂本さんが好きです。(誰も聞いてないから
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