思い出の人にはならない。


ここから、はじまる。


俺たちが生きている限り・・・・・・・・・
















Distiny












































「英二、のこと頼めないかな。」

授業中突然隣の席の方から言われた言葉
俺は理解できないでいた。
「頼むって何を?」
隣の席、不二周助に尋ねてもただにこにこしているだけだった。








































それから数日後、不二とが別れた。
この2人は2ヶ月前から付き合っていた。とても仲がよく、別れることなんて絶対ないと思っていた。
不二は「に手を出したら許さないよ。」と言うほどのこと好きだったし、においては
「入学したときから不二君のことが好きだったの。」というくらい不二にはまりこんでいた。
だからこの2人が別れたなんて信じられなかった。
もしかしたら単なる噂なのかもしれない。
とにかく本人から聞くのが一番だと思い、一緒に帰る約束をした。

























「あのさ、不二。のことなんだけど・・・。」
「あ、もう英二の耳にも入ったんだね。」
「実のところどうなの?」
「本当のこと。僕たち別れた。」
不二から出た言葉は俺が望んだ否定の言葉ではなかった。
どうしてなのか。なぜなのか。
その気持ちと同時に、怒りや憎しみなどのでてはいけない感情が溢れ出そうとしていた。

「なんで別れたの?」
不二は一瞬つらそうな顔をしたがすぐにいつもの顔に戻った。
のこと好きではなくなったから、僕からふった。」

一番聞きたくなかった返答だった。だから気づくと、不二を殴っていた。
止めたくても止められない気持ちでいっぱいだった。

の心の痛みはこんなものじゃない!不二のその勝手な気持ちのせいでどんなに傷ついたか
わかってる?こんなことになるなら・・・」
「『こんなことになるなら俺がを貰ってた?』」
突然俺が言っている時に話を切って言ってきた。
の気持ちも、英二の気持ちも痛いほどよくわかってる。
だから結果的にはこれでよかったんじゃない?英二だって内心喜んでいるんでしょ?」

すごいムカついた。殴るだけじゃ気が済みそうもなかった。
だが言い返すことはできなかった。言い返したいのに何も言えない。

不二の言う通り、もしかしたら内心別れてくれたことを喜んでいるのかもしれない。
俺もが好きだった。
どちらかと言えば自分との方が気が合っていたし、話だってよくしていた。


だが、

不二に取られた。

不二ものことが好きだったなんて知らなかった。

その日から俺が抱いていたに対する想いを封印しなければならなかった。
何度想いを告げようと思ったことか。それでも思いとどまった。

大好きなとそして、不二のためなら・・・・・・・・・


でも、今回のことで不二には裏切られた気分になった。
しかも不二は、俺の気持ちを知っていて付き合っていたのだから。
もうこれ以上この場にはいられなかった。
不二がいる所にはいたくもなかった。
その場を後に走っていった。





















































その日以来不二と話すこともなくなった。弁当だってを連れて大石のところで食べていた。
も最初は戸惑っていたが、慣れてきたみたいで最近は今まで通り明るく笑うようになった。

でも、無理して笑っている様にしか見えなかった。

その姿を見ているのがつらくて、何度も外に誘い出した。もちろん年中暇なわけではないので、
の友人にも助けを求めた。
とにかく、家に篭ることを避けさせた。篭れば考えてしまうと思ったから。
不二の事を忘れさせて自分のほうに気持ちをむけさせたかったから。

・・・・・・・でも駄目だった。

に心の底から笑わせ、明るくさせることができなかった。
自分じゃ駄目。不二じゃないと・・・

そう感じ始めた頃、人生で最大の事件が訪れた。





















































「英二!!」

たまたまその日は日直で、部活にはまだ出ていなかった。
教室で日誌を書いている時、突然大石が息を切らして入ってきた。

「どうしたの大石?日誌もうすこしで終わるから待っててにゃ。」
「それどころじゃないんだ。・・・不二が、不二が倒れた。」
聞いた瞬間驚きのあまりシャーペンを落としてしまった。
「なんの冗談を・・・」
「冗談なんかじゃない!!」
大石は怒鳴りつけた。
大石の剣幕そうな顔。不二はそれほど重傷なのか。

嫌いとか会いたくないとかそういう問題ではなかった。
とにかく早く不二の元へ駆けつけなくてはいけない気になった。








































病院に着くとみんなはすでに揃っていた。その真ん中のベットに不二は座っていた。
みんなからの会話からするに、どうやら単なる貧血だった様だ。
俺は少しホッとした。
不二に話しかけようか否かと少し迷っていたがそんな自分に気づいてか不二は微笑んでくれた。
どうしてかわからなかった。不二に対して今まで酷い態度を取ってきたのに。
それでも不二は優しく微笑んでくれる。なんか自分が空しくなってきた。

「みんな、僕はもう大丈夫だから、早く部活に戻らないと。大会も近いんだから。」

そう言われ、みんなは貧血なら心配はないだろうと病室を後にし始めた。
話し掛けるタイミングを失った俺はみんなと一緒に仕方なく帰ろうとしていた。

その時不二に名前を呼ばれた。

「英二、英二は少し残ってくれる?」

意外な展開となった。





病室に残った俺はどうしたらいいのかわからず、この雰囲気が嫌でなんでもいいから
話し掛けてみることにした。

「それにしても貧血だにゃんて不二らしくないよ。いい暮らししてるんだから食事だって
困らないのに。ダイエットでも・・・・・」
、元気にしてる?」
「え?」

まさかここでその話が出てくるとは思わなかった。
2人の間でのその話はタブーなのだから・・・。

「元気・・・だよ。見てて分からない?」
「最近見ること避けてたんだ。だからどうなのか分からなくて。でも元気なんだね。
・・・安心した。」

安心した。

この言葉を聞いてまたあの感情が出てきそうになった。元気じゃなくさせたのは不二のせいなのに。
それで元気になって、安心して・・・・・・
それは責任逃れをして手にいれた安心感じゃないのか。
自分はもう悪くないんだとそう言いたいのか。

いろいろ考えがグルグルまわって・・・・・。

今まで全て不二が悪いと思ってきたけど、もしかしたら違うのかもしれない。
不二の今までの表情を見ていたらそんな気もして。
だから謝ろうと思いかけたのに安心したと聞いた時、やはり不二が悪いとまた思い始めた。
それでとっさに出た言葉。・・・は元気だと。

嘘だった。

元気ではなかった。

見た目は元気そうに見えるかもしれない。でもなにかが違う。
心が病んでいるというべきなのか。





俺は嘘をついた。とかかわって欲しくなかったから。
とよりが戻ってしまうことを恐れたから。

不二のことは許せない。
でも自分利益のために嘘をついている自分のほうがもっと許せなかった。
いっそのことさえいなければ不二とは今まで通り仲良く問題無くいれたのに。
そんな恐ろしいことを考えてしまう自分が人間として許せなかった。

自分は不二に謝らなければいけない。そして、謝りたいと思っている。
のことは関係なしに、不二の親友として仲直りをしたかった。

「不二・・・・・あの・・・さ、その・・・」
「英二。」
「にゃ、にゃに?」
「ごめん。」
「・・・・・・・・・・」
まさか不二から謝ってくるとは思いもしなかった。だから何て言ったら言いのか分からず、
呆けてしまった。

「英二に本当のことを言うよ。」

本当のこと。何か今まで嘘をつかれていたのだろうか。まさかのことかと少し不安になったが、
そんなことを考えているうちはまだよかったと知ることになる。

「僕はのこと今でも好きだよ。でも駄目なんだ。僕と一緒にいると悲しむだけになってしまう。」
「何言って・・・」
「だから振るしかなかった。どんなに酷いことだとしても、これ以上僕に関わるともしかしたら
・・・立ち直れなくなると思って。だから・・・」
「ちょっと、ストップストップ!いったい何の事か全然分からないんだけど。
のことがまだ好き?でも駄目?にゃんで?意味わかんないよ。」
不二は菊丸の方をじっと見ていた。何かを決心するかのように。

「・・・・・ガンだよ。」
「ガ・・・ン・・・」
不二は頷き話を進めた。
「もう末期みたいでね。今日倒れたのも、痛みに耐えられなかったから。
抗がん剤は使ってないから普通に暮らせたし、見た目だってかわってなでしょ?
でも、もう無理みたい。色々否定してきちゃったし。でも、どうせ死ぬなら普通の生活をしながら
死にたかったからギリギリまで粘ってきたんだけど、IVHを入れることも決まったし、
あまり動けなくなっちゃったし・・・。
こうなることは病名を知った時分かっていたから。だから、時期を見計らって別れたんだ。」

不二が何を言っているかわからなかった。ガン?死ぬ?
頭の中が真っ白だった。それでも、なんとか意識を保とうと必死だった。
その時数週間前に不二かわ言われたあの言葉を思い出した。

『英二、のこと頼めないかな。』

最初は意味がわからなかった。でも、今なら分かる。
自分には、もうを守っていくことが出来ないから、英二が今度は守っていって欲しいと。
きっとそういうことだろう。
死んでしまっては、守るどころか触れることすら出来ない。

どういう顔をしたらいいのか、どう話し掛けたらいいのかわからない。
でも不二は、にこにこしていた。

なんで笑っていられるの?もう死ぬんだよ?何もできずに死んでいくんだよ?

無理して笑っているのは分かっていた。でも、そんな不二の表情がとても辛かった。
「なんで、・・・なんで笑っていられるの?
・・・・・やだかんね。不二がいなくなるなんて、絶対やだかんね。」
「英二・・・」

不二は突然立ちあがった。その行動に驚いて泣きそうだったのが一瞬で吹き飛んだ。
「駄目だよ不二。寝てないと・・・」

そう言って寝かそうと近づいた時、何か全体が熱くなった。
目の前にあったはずの不二の顔が俺の顔の横にあった。首には両腕がまわされていた。
今、この状況が把握できず、
『ふ、ふふふふふふ不二ぃぃぃぃ〜!!』
と言わんばかりの顔をしているのは明白で・・・・・・・・。

でも、不二が震えているのが分かって。
どうしてあげる事もできず、ただ、俺も不二の背中に手をまわして抱き着いていた。
そうすることで、少しでも不安を取り除けたらとの期待を込めて。






















































その日以降俺は毎日不二のところに通った。授業のこと、部活のこと、俺が見たこと全てを教えた。

「桃がさぁ、ダンクスマッシュしたボールがバウンドしてどこいったと思う?にゃんと、手塚の頭
の上に落下して眼鏡ずれるわ、周りは笑うの我慢するわで大変だったんだよ。
大石も大石でフォローにまわったのにフォローになってないこというんだよ。
 『も、桃は力をあげた上に命中力もあげたというのを、その、実際に手塚自身にの身体で身をも
  って体験してもらおうと・・・いや、そのずれた眼鏡も似合っていると言うか・・・』
 『な、ちょっとまってくださいよ大石先輩。手塚部長を狙うなんてそんな恐れ多いことするわけ
  ないじゃないですか!』
 『ち、違うのか!?』
だってよ。もう本気で笑うの耐えられにゃかった。」
「ふふ、楽しそうだね。」
「うん。すっーごく楽しい・・・にゃんて言っていいのか・・・な。
俺達だけ楽しくて不二は楽しいことなんてこれっぽっちもないでしょう?」
「そんな事ないよ。聞いていておもしろいし、英二が毎日顔見せに来てくれるし、家に帰って来れ
たし。」

病院での治療は、不二自身がとてもいやで家でのんびり死まで過ごしていきたいとの希望もあって
自宅療法の道を選んだ。
でも、そのおかげでいつでも会えるし、笑っていられるのも住み慣れた環境のもとにいられるから
だと言っていた。
俺も不二を笑わせたく毎日来ているけど、今日ばかりは、楽しい話ばかりではなかった。
「不二、・・・手塚が不二は本当に貧血だけなのかって聞いてきた。あと竜崎先生から、明日にで
も不二の様子見にくるって。どうやら不二の病気のこと知っているみたいだった。」
不二は笑っていた顔とはうってかわって、厳しい顔になった。
「竜崎先生は病気のこと知ってる。手塚は知らないけど今後のこともあるし、明日手塚と竜崎
先生と裕太連れてきてくれる?どうするか話すから。」
「手塚に言うの?」
不二は頷いた。










































次の日、指定人物を連れて不二家に行った。俺はあらかじめショックを和らげるように手塚にその
話をふれさせておいた。
いつもみたいに表情は変えなかったが、眉間の皺をよせて難しい表情をしているようにみえた。






部屋につくと家族が集まっていた。手塚は不二の姿を見て驚いた。
チューブでつながれた姿を見たら誰だって驚くだろう。

最初、手塚に病気の話をした。受けとめることのできない真実であったが受けとめるしかなかった。
そして今後のことを話し始めた。あたりまえなことだが学校にも部活にも行けない。
だからってみんなにこの事実を教えようとは思っていない。
結果遠くに引っ越すということになったが、実際はふりであった。
学校側にはそう伝えて今後を過ごすことにする。そうなると次は部活の問題だった。
レギュラーが一人減るからそれなりに力のあるやつを育てていくしかなかった。

「・・・裕太。青学に戻ってきてくれない?」
突然の兄からの申し出にとても驚いていた。
「な、何を言って・・・」
「もともと僕がいたからやめたんだよね。もういなくなるし聖ルドルフにいる必要ないでしょ?最初は
いろいろ言われるかもしれないけど、きっとそのうち僕のことも忘れて・・・」
「青学は!・・・青学はアニキの居場所だ。」
「裕太・・・。」
「俺の居場所じゃない。俺の居場所は聖ルドルフで、そこでこれからも頑張っていく。・・・アニキを
目標にして。」
「・・・・・・・」
「ごめん。」
「・・・あやまらないで。むしろそう言ってもらえて嬉しかった。裕太のその決意も知ることができた
しね。」
「アニキ・・・」

結局そのことについては手塚と竜崎先生がみて判断していくこととなった。
最後に決まったこと・・・。更なる部活動強化のため遅くまで練習する。つまり、不二とはあまり会え
なくなるということだ。しかたないこととはいえ、気持ち上わりきれない感じがした。
でも、不二は、『そうした方がいいよ』と言ったので、俺の意志じゃどうすることもできなかった。










































次の日から、部活動の強化が早速始まった。
乾が考えた乾式スーパーなんだかってのをずっと受けさせられフラフラだったけど、おかげで少し
気持ちにもゆとりができた。




そしてそれから5日後

「英二、大丈夫か?」
「ぜっんぜん大丈夫じゃな〜〜〜〜い。」
スーパー乾汁(もうすでにいろんな飲み物をブレンドされてなに汁あるいはなに酢かわからないので
あえてこう呼んでみた)を飲まされて失神寸前だった。
「大石もさ、飲んでみようよ〜。イケるよこれ。おすすめv」
「英二、にっこり顔で不二の台詞言うのやめようよ。」
「不二・・・か。・・・・・どうしてるのかな。」
「そういえば貧血にしては休みすぎだよな。」
「そ、・・・だね。」

あの日以来連絡もとっていなかった。部活に疲れて家に帰ったらすぐ寝てしまうからだ。
部活ができるのも残りわずかだけど、不二といれるのも残りわずかだった。どちらかしかとれない
この状況がとてもいやだった。だからせめて不二が言ったように部活動を頑張ることにした。

「大石、ちょっと電話を・・・」

「菊丸、少しいいか?」
「手塚?」
後ろから手塚が話しかけてきた。
「なに?」
「いや、ここでは少し・・・」
手塚の表情が少し青ざめている様に見えた。
「ま、さか・・・」
手塚はうなづいた。
不二の身に何か起こったのだ。
とにかく考えるよりも動いた方がいい。手塚とともにタクシーで不二の家に向かった。








top//next




あとがき
正直、癌に関して全然無知に等しいのでチューブとかIVHとか意味わかってないです。
IVHはまた癌には関係ないかもしれない疑惑ですが、要は病院にとらわれる必要はない。
自分の意志で自分の死への道程が決められることを知ってもらいたいです。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送