あいつとの出会いは幼稚園の頃。


とても強くてそして大きな夢を持っていた。


そんな彼女に憧れていた。










薫風にのって





















卒園式の時思いきって話しかけてみた。そしたら・・・・・
『天下の様に向かって話しかけるとはいい度胸ね。』
と言われた。
初対面だというのに、この言い方には驚いたが気にしないことにした。

『君に憧れてるんだ。大きな夢を持っている君に。』
『大きな夢は誰だって持っている物』

『君はその夢に向かってこんなに小さな時から努力をしている。』
『努力なんてしてない。』

『僕は・・・』
『あんた何?いきなり話しかけてきて。夢?そんなのくだらない!夢は夢でしかないんだから。』

俺は驚いた。そんな子ではなかったはずだ。
ちょっと前までは、友達みんなに宇宙飛行士になりたいという話をして、その夢に向かってブランコ
乗りまわしたり(ゆれに耐える訓練?)ジャングルジム登ったり(体力強化?)進んでひらがなや英語の
勉強したり(知力強化?)頑張っている彼女だったはずだ。なのに、彼女に何があったんだろう。

『・・・・・算数』
『え?』
『できない。』
突然彼女が話し出した。

『宇宙飛行士になるには何でもできなくちゃいけないんだって。だから何でもできるように今のうち
からお勉強してたのに2+9ができないの。』
『なんで?』
『ゆ、指が足りなかったの。』
そういうと突然泣き出した。俺はびっくりしてどうしたらいいのかあたふたしていた。
『あの、え〜と、・・・2+9なんて今出来なくても。』
『い、ひっく・・・今でき、できたい・・・ひっく。』

この頑固さにも憧れていたが今となっては拒否したくなってきた。
でもなんとかなきやませたい一心でとっさに言った。
『じゃあ、僕の指使いなよ。』
俺は手を出した。
彼女は泣きながらその手をじっと見ていたが、しばらくすると、自分の手を上にあげ1つずつ指を
おりはじめた。
『・・・8・9・10・・・・・・11!できたぁ。』

彼女はとても喜んでいたが俺が見ていたことに気づくと咳をして急に態度を変え始めた。
『あ、あんなのホントは簡単だったんだけど君に教えるためにわからないフリしただけだから。』
『じゃあ、宇宙飛行士やめるってのも嘘?』
『ももももちろん。』
彼女のあたふたしたしゃべり方に俺は笑った。彼女はその姿を見て怒りだした。
『なんで笑うの!』
『ははっ、いや、だって必死なんだもん。』
『いきなり呼び捨て?』
『駄目ですか?』
『まだ早い!!』
『じゃあいつからよろしいんですか?』
『・・・君が私より偉くなったら』





































今日は、竜崎先生に頼まれてある生徒に数学を教えることになった。
なんでもかなり数学ができないらしく今回平均を超えなかったら夏休みがないとか。
数学ができないっていうことで昔を思い出していた。そういえばあの子はどうしてるんだろうか。
数学(算数)今じゃできるんだろうなと思いながら立っていると、竜崎先生に入室の許可が出たので
入ることにした。

「失礼します。」
ドアを開けてはいると、そこには竜崎先生と女生徒がいた。

「私が顧問をやっているテニス部の部長、手塚だ。」
「3−4手塚国光だ。よろしく。」
俺が紹介を受けてお辞儀をすると相手の方もおどおどした感じでお辞儀をしてきた。
「3−6です。」
「この前いった通りだ。手塚よろしく頼むぞ。」
「わかりました。さあ、行こう。」
彼女は状況がつかめていないらしくあたふたしていたので俺は腕をつかんで教室まで連れて行くこと
にした。








彼女はボケーっとしながらノートを広げシャープペンを持ち問題を解き始めた。
時々動きがとまっては、う〜んと考えだしそのうちまた動き始めた。
けして俺に聞こうとはしない。わからなかったらとばしてやっていた。
彼女から教えて欲しいと言わない限り、教えようとは思わなかった。
意地悪をしているわけではない。
無理やり教えるよりも、本心から学びたいと思わない限り、覚えることができないと思ったからだ。
とりあえずその言葉が出るまで、読書をして待つことにした。





しばらくすると彼女はなぜかしらないが俺をじっと見始めた。
何か聞きたい事でもあるのか、それとも俺の顔に何か付いているのか。
何も言われないでまじまじと見られるのは良い気分はしない。
なんとかこの状況から脱出したくて自分から話しかけることにした。
「何か俺の顔に付いているか?」
「え?ひゃ、な、な、な、何もついてないよ。」
彼女はとても驚いた様に否定していた。
「そうか、ならいい。」

俺はまだ、読みかけの本にしおりを挟み本を閉じた。
本当は質問してくるのを待っていたが、きっとこの先聞いてくることはないだろうと判断し、
わからないところはないか聞いてみた。

「・・・とりあえず今のところありません。」
「・・・うそ、だな。」
「なんで・・・。」
「さっきっから手が動いていない。とけていない証拠だろ。」

彼女は下を向いてしばらく黙っていた。でもいきなり俺の顔を見て謝ってきた。
きっと解けなくて謝っているんだと思った。
「謝る必要はない。できないことは竜崎先生から聞いてたからな。できないのは覚悟の上さ。」
「違うの、そうじゃなくて、手塚くんの貴重な時間を削ってまで私に勉強を教えてくれることが
本当に迷惑をかけているというか何というか・・・」
彼女はあたふたしてしながら言っていた。
その姿を見て、ああ、彼女はそういう人なのかってわかった。
「俺は迷惑だと思っていない。」
俺は彼女を見て言うと、またしてもじっと凝視された。
、やはり俺の顔に何か付いているのか?」
なにか心配事でもあるのかもしれない。だから彼女の顔を覗きこんだ。
「・・・え、・・・ひゃぁ。ち、ち、ち、ちちちちち違うよ。えっと、そう、ここがわからなくて
教えてもらえないかなぁとか思ったりして。」

急に声を上げたので驚いたが、彼女自信勉強にやる気が出たみたいで質問してきたから答えることにした。
「ああ、わかった。そこはy=x+2がこの頂点の座標の・・・・・・したがって、ここは放物線と
直線が接する点(3,4)が答えとなるわけだ。この答えを使って(2)を解くんだが、これは・・・」

質問をされた時、急にまた、昔の事を思い出した。そういえばあの子もだった。そして数学嫌い。
同一人物かと一瞬思ったが、あの子はあれ以来会ってもいないし、遠くへ引越ししたとも聞いていた。
でももしかしたらって思った。聞いてみる価値はある。説明し終えたら聞いてみることにした。

「というわけだ、。」
「ZZZZzzzz・・・」
「・・・・・」
・・・前言撤回。こいつはあの子じゃない。




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