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室内は騒がしかった。

物音に驚いて駈け付けた兵士や扉の修理をしている人でいっぱいだった。

本来なら自分の部屋で、しかも壊した張本人である呂蒙が直すべきところであろうが、

その風景を呆然と眺めているだけであった。

「呂蒙様、一体これは何があったのですか」

兵士が次々に話しかけてきたが、呂蒙の耳に入っていなかった。

その様子を見てか、兵士たちはだんだん声をかけなくなり、いつの間にか扉も直され

誰もいなくなっていた。

「もう夕刻、か・・・・・」

西日の眩しさに、やっと今の時刻を知った。それと同時に腹がなる。

朝から何も食べていないことに気がついた。

「こんな時でもおなかすくか?」

自分自信に呆れつつも体は食を欲している。しかたなく呂蒙は食事を求め部屋を出ることにした。



歩きながら考えていた。

どうやってと仲直りしようかと。

普通に謝ったところで絶対に許してくれるはずがない。

気持ちを別のところに向けて・・・、あ、いきなり襲ってみるとか。

・・・駄目だ。人としてそれは許されない。最悪、亮☆ショカツに相談して何とかしてもらうしか、

とブツブツ言いながら角を曲がった。

同時に、全体に刺激が走りおもわずよろめいた。

人とぶつかったのだ。

とっさに大丈夫でしたか、と座り込んでしまった相手に手を差し伸べた。

すいません、と謝りつつ手を掴んでお互いの顔を見た瞬間、体が硬直する。



「呂蒙様」

ほぼ同時に名を呼び合い、気まずくなり、二人して下を向いてしまった。

しかしここで言わねばと、呂蒙は意を決して話しかけた。

「俺はそなたを信じていた。それだけは分かってほしい。信じたからにはそれに近い結果が欲しかった。

すまない、とても悪いことをした。謝って許される話でもないが・・・」

「信じていてくれた?」

「当たり前だ。初めて会った時そう約束しただろ?」

初めて会った時、そう言われ、は昔を思い出した。































一年前、が住んでいた村は賊に襲われた。

賊は村人を殺し、食料や金目の物を奪い取り村を焼いた。

は村人が殺されていく様子を目の当たりにした。

村人は助けを求め、我こそは生きようと人は人を盾にし、村人を裏切り、我こそはと生きたいがため

賊徒の仲間となり殺し尽くす。

あんなに皆仲良かったのに、あんなに平和だったのに、村は一日足らずで崩壊した。

皆殺され、目の前は死体でいっぱいだった。

は動けなかった。

自分だけは生き残った。見つからなかったのだ。

ここに隠れてろと言ってこの場から去った兄は、賊の仲間となっていた。父や母は、最初に殺された。



心は崩壊寸前だった。

楽になりたかった。

は次第に意識を手放した。









目を覚ますと見知らぬ風景で、おもわず飛び起きる。

隣りで驚いている男がいた。

「ど、どうした?何か悪い夢でも」

「こ、こは?」

「城内の医務室だ。ずっと目を覚まさなかったから心配したぞ」

「わ・・・たし・・・・・・、む、村は!?」

「残念だが、そなたしか生存者はいなかった」

「っ・・・」



泣いた。

涙が止まらなかった。

男はそっとなでてくれた。

数時間後、話ができるようになり、村の襲撃のことを話した。

「みんな、皆裏切ったんです。兄さえも・・・、私、もう何を信じていけばいいのか・・・」

胸が張り裂けそうになり、また涙する。

男は、焦らせることはせず、泣き止むまで待った。

ようやく泣き終えると、優しく言った。

「なら、私を信じるがいい。そして孫権様を信じるがいい。けして裏切らない。

私たちもそなたを信じるからだ」

「でも、会ってまだ間もないし」

「信じるのに時なぞ必要なものか。孫権様は会ったことも無いがもしよければと、そなたを

下女にでもどうか、と仰せられているのだぞ?」

「う・・・そ・・・・・」

「信じろと、言っただろ?」

男は優しく微笑んだ。また涙しそうになったが、袖で拭きはらいも微笑んでみせた。

その男の名を呂蒙といった。






























は笑みを浮かべた。

突然どうしたのかと、呂蒙は驚いている。

は呂蒙の手を引っ張り起き上がった。突然のことでおもわずよろけながらも、踏みとどまった

呂蒙の中に飛び込む。

「ど、どどどどどうしたのだ?」

「・・・・・・許すことにします」

「え?」

「気まずいままは嫌です。前のように、何もなかった頃の様な生活に戻りたいです」

「許してくれるのか?」

「次はないですよ?」

呂蒙は喜んでを抱きしめた。




   

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